君の隣が、いちばん遠い



12月に入って、街の景色が少しずつ冬の色に変わり始めた。

駅前の広場にはイルミネーションが設置されて、夜になると金色の光が小さく瞬く。

赤や緑の飾りが並ぶウィンドウを見ていると、自然と胸の奥がふわっと熱くなる。


「……今年も、クリスマスが来るんだな」


小さく、そんな独り言がこぼれたのは、学校帰りに街中を歩いていたときだった。

バイトをしていたときいつも通っていた道なのに、今日はやけに世界がキラキラして見える。

歩く速度を少しだけ緩めて、ショーウィンドウに並んだリボンや包装紙をぼんやりと眺めた。


クリスマス。

わたしにとって、少し特別な日だ。


ちょうど一年前、一ノ瀬くんと付き合い始めたのが、あのイルミネーションが瞬く日だった。

それからの一年は、思っていたよりずっとあたたかくて、たまに苦しくて、でも、何よりも幸せだった。


「今年のクリスマスも、一緒に過ごせるんだよね」