君の隣が、いちばん遠い



「……修学旅行、どうだった?」

「うん、楽しかったよ。行けてよかった」

「そっか。……佐倉さん、そういうとき、目がすごく柔らかくなるよな」

「え?」

「今、いい顔してた。たぶん、楽しかったんだなって、すぐわかった」

「白石くん、なんかそういうの、鋭いよね……」

「まあ、観察するのが得意っていうか、人間観察、昔から好きなんだよな」


一緒にいる時間は不思議と気まずくならなくて、心が落ち着く。

けれど、どこかで、わたしの心はずっと一ノ瀬くんを探している気がしていた。







その日の夜、ベッドに寝転びながらスマホを開くと、一ノ瀬くんからメッセージが届いていた。


『今日もおつかれ。久しぶりに、明日一緒に帰れそう。よかったら、待ってる。』


わたしはすぐに『うん、帰ろう』と返信した。


ふと、スクロールして見返したトーク履歴には、「おやすみ」「がんばって」「ありがとう」が、いくつも並んでいた。


日々の中で少しずつ積み上げてきた言葉たち。

それは、わたしたちが確かに“続いている”証みたいで、胸がきゅっとなった。