修学旅行二日目、柊くんの告白――あれはきっと、紗英ちゃんのなかでも大きな出来事だったんだと思う。


あのあと、「答えられなかった」とは言っていた。

けれど、それでも、翌朝の紗英ちゃんの顔は、どこか晴れやかだった。

迷いのなかにも、小さな決意みたいなものが宿っていて、それを見ていたわたしのほうが、じんときてしまったほどだ。


「柊くん、最近すごく優しくなった気がする」

「もともと優しいやつだよ。ただ、ちょっと不器用で、素直じゃないだけで」

「それを“優しい”って言うの?」

「俺にはそう見えるけどな」


わたしがくすりと笑うと、一ノ瀬くんも口元を緩めた。







お昼休み。

今日は久しぶりに、紗英ちゃんと二人きりでお弁当を食べることにした。


「ねえ、修学旅行、ほんと楽しかったね」

「うん、あっという間だったよね」

「……柊くんのこと、今も考えてる?」


わたしの問いに、紗英ちゃんは箸を持ったまま、ちょっと間を置いた。