そんなときだった。
「ちょっと外、行かない?」
柊くんが紗英ちゃんにだけ声をかけた。
「え? う、うん……」
戸惑いながらも、紗英ちゃんは頷いた。
ふたりが席を立ったあと、残された私と一ノ瀬くんは、なんとなく目を合わせて、わたしが言った。
「……タイミング、来たのかもね」
「うん」
わたしの胸が少しだけざわついた。
そのあとのことは、紗英ちゃんが戻ってくるまでわからなかった。
けれど、あとから聞いた話によると、近くの川沿いの遊歩道をふたりで歩いていたらしい。
「ずっとさ、お前のこと見てたんだよ」
「……え?」
「なんか、いろんなやつと楽しそうにしてるの見て、俺、ずっと気になってて……っていうか、もう好きなんだと思う」
柊くんが、思い切ったように言ったのだという。
紗英ちゃんは、しばらく黙っていたらしい。
どう答えていいかわからず、ただ、胸がドキドキして、口が動かなかったと。



