「ちょっと怖いかも……」
「でも、かわいいよ」
紗英ちゃんが鹿におそるおそる手を伸ばすと、柊くんがさっと横からその手を支えた。
「鹿、けっこう突進してくるから、気をつけろよ」
「……ありがと」
わたしと一ノ瀬くんはその後ろから、ふたりのやりとりを静かに見ていた。
「……いいね、あの二人」
わたしが言うと、一ノ瀬くんは少し笑って、「まあ、進展すればいいけどな」と返してきた。
午後になり、予定通りカフェに立ち寄った。
木の香りが漂う古民家カフェ。
落ち着いた雰囲気の店内で、私たちは窓際の四人掛けの席に座った。
畳の部屋にちゃぶ台のような低いテーブル。
少し不便だけど、どこか懐かしさを感じる。
注文したのは、ほうじ茶のラテと抹茶パフェだった。
「うまっ……これ、ヤバい」
柊くんが幸せそうな顔をしてパフェをかきこんでいる。
紗英ちゃんも笑っていた。



