昼休みの教室。

窓からやわらかい春の光が差し込んでいた。


わたしは、自分の席で静かにお弁当の包みを広げていた。

その横に、軽い足音と声が届く。


「ねえ、佐倉さんってさ、放課後いつもどこか行ってる?」


声の主は岸本さん。

ツインのお団子ヘアを揺らしながら、隣の席に腰を下ろした。


「……うん、まあ……少しだけ寄り道してるかな」

「へえ、カフェとか行ってそう」


わたしは首を横に振って、ほんの少しだけ微笑んだ。


「……バイトしてるの。文具店で」

「えっ、ほんとに? なんか、めっちゃ似合うんだけど!」


彼女は声を弾ませて言う。


「お客さん来たら、いらっしゃいませって言ってるの? やばい、それ見てみたい」

「……ふつうに言ってるだけ、だけど」


わたしは小さく答えた。

からかわれてるわけではないと分かっていても、照れくささが残る。