「すごいね、こんなに見えるんだ…」

「ほら、写真撮ろうよ」


紗英ちゃんがスマホを取り出して、わたしたちはみんなで並んで写真を撮った。

風が少し強くて、前髪が乱れて笑いながら撮り直したりもした。


そのあと、班ごとの自由行動が始まった。


「次、どこ行く?三年坂のあたり、見たいって言ってなかった?計画通りに行く?」


わたしの提案に、みんながうなずく。

古い町並みを歩きながら、雑貨屋さんに入ったり、抹茶ソフトを食べたり。


「ねえ、ちょっと手、つないでもいい?」


小さな声で言ったのはわたしだった。

混雑する通りの中で、一ノ瀬くんが振り返る。


「もちろん」


そう答えてくれた彼の手が、そっと私の手に触れる。

お互い、汗をかいていないか少しだけ気にしつつ、それでもその手は心地よくて、温かかった。


でも、人がすれ違うたびに意識して、少し手を離してしまう。

すると、ほんの少しだけ胸がきゅっとする。


「……こういうの、慣れないね」

「うん。でも、ちょっとずつ、ね」


そのやり取りが、まるでお互いの距離を確かめ合うようだった。