日差しが少しだけやわらかくなった気がする朝。

セミの声が遠ざかって、代わりに鈴虫の音色が夜の空気にまざるようになってきた。


二学期の始業式。

わたしはいつも通り、学校までの道を一ノ瀬くんと並んで歩いていた。


「なんか、夏休みあっという間だったね」


わたしがつぶやくと、一ノ瀬くんは軽くうなずいた。


「ほんと。気づけばもう秋。……ていうか、課題多くなかった?」

「うん。あと三日休みあったら、もうちょっと余裕あったのに」


笑い合ったあと、ふたりで小さく息を吐いた。

それぞれに勉強や塾、進路のことを考えて過ごしていた夏。

一緒に過ごせた時間はほんのわずかだったけれど、それでも一緒に笑える今が、なによりほっとする。


学校に着くと、廊下の空気が夏とは違っていた。

黒板の端には「文化祭準備スケジュール」という紙が貼らている。

クラスメイトたちの会話の中にも、どんな出し物にするかという声がちらほら聞こえてきた。