夏休みも、終わりが見えてきた。

ふとカレンダーを見ると、残りの日数が指折り数えられるほどしかなくて、胸の奥が少しだけ苦しくなる。


――結局、遊びに出かけたのは、あの日だけだったな。


海へ行った、あの一日。

それ以外は、塾か夏期講習か、家にこもっての勉強ばかりだった。


わたしの夏は、真面目すぎるくらい真面目な時間でできていた。


塾が終わる頃、夕方の風がようやく涼しく感じられるようになっていた。

その時間になると、教室の外に見慣れた後ろ姿が立っていることが、最近増えてきた。


「佐倉さん、お疲れ。今日も一緒に帰る?」


白石くんだ。


わたしは最初こそ戸惑ったけれど、今では自然に「うん」と返せるようになっていた。


白石くんは、同じ数学のクラスにいて、私が一度質問をしたのがきっかけだった。

それ以来、同じ時間に授業が終わると、少しだけ話して、一緒に駅まで歩くようになった。