「ねぇ、海行こうよ!」
紗英ちゃんが言い出したのは、期末テストの最終日だった。
汗ばむ陽気に、窓の外で揺れる木々さえも夏の始まりを予感させていた。
「え、海って……今から?」
「夏休み入ったらだよ!ひよりと一ノ瀬と柊と、みんなでさ!せっかくの高校生活だよ?青春って感じのこと、しよ!」
勢いに押されるようにして、私たちはその場で日帰りの海旅行を決めた。
場所は、電車とバスを乗り継いで行ける、静かな海辺の町。
あまり観光客で混んでいないところを紗英ちゃんが見つけてくれた。
当日。
朝から太陽が照りつけていて、絶好の海日和だった。
待ち合わせ場所の駅前には、すでに水着の上にTシャツとショートパンツを重ねた紗英ちゃんが手を振って立っていた。
「おはよ、ひより!今日もかわいい~!」
「え、そ、そうかな……?」
私は真っ赤になって、ワンピースの裾をぎゅっと握った。



