夜。

部屋のベッドの上で、スマホを握りしめていた。


ふと、LINEの通知が鳴る。

──一ノ瀬くんだった。


『遅くなってごめん。今日、親と話しててスマホ見れなかった。』


続いて、


『最近、ちゃんと話せてないね。塾とか学校のこともあるし、佐倉さんに心配かけてると思う』


そのメッセージを読んで、胸の奥がじんわりと温かくなった。

すぐに返信を打つ。


『ううん、心配というより……会いたいなって思ってた』


少しの間を置いて返信が来る。


『俺も。佐倉さんの顔、ちゃんと見て話したい』


文字の向こうから、あたたかな声が届いた気がした。


好きな気持ちは、ただあるだけじゃ届かない。

ちゃんと伝えようとすること。伝えたいと思うこと。


それが、“ふたりでいる”ってことなのかもしれない。



夜の部屋で小さく笑って、スマホを胸の上に置いた。


今はまだ、何も決まっていない未来だけど。

この手のひらの向こうで繋がっている想いが、きっとわたしを前へ進ませてくれる。


──ひとりじゃ届かない景色も、ふたりなら見えるかもしれない。

わたしはそう思いながら、そっと目を閉じた。