帰宅後、美帆ちゃんがソファで雑誌をめくっていた。


「おかえり。オープンキャンパスどうだった?」

「……ん、うん。いろいろ考えさせられたかな」

「いいね、それ。大学の雰囲気って、実際行ってみないと分かんないよね」


わたしが靴を脱いでリビングに入ると、美帆ちゃんがニヤッと笑った。


「で、一ノ瀬くんとは最近どうなの?」

「えっ……な、なにその急な話」

「最近さ、なんかひより、スマホばっか見てない? 既読つかないLINE見てソワソワしてる感、めちゃくちゃ伝わってるよ」


ドキッとした。

図星だった。


「べ、別に……ただ、ちょっと連絡こないと、気になるだけで……」

「それ、恋する乙女ってやつだね」


茶化すように笑いながら、美帆ちゃんはわたしにジュースを差し出してくれた。


「でも、大丈夫だよ。ちゃんと向き合ってくれてるじゃん、一ノ瀬くん。わたしは、そういうとこ見てるから」


その言葉が、少しだけ心を軽くしてくれた。