君の隣が、いちばん遠い



以前は、放課後になると自然に隣にいて、一緒に歩いて、一緒に話して、一緒に笑っていたのに。

今は、隣に誰かがいないことが、こんなに心細いなんて思いもしなかった。


「佐倉さん、今日のプリント、もう提出した?」


久しぶりに声をかけてきたのは、クラスメイトの吉岡くんだった。

相変わらず淡々とした口調だけど、その分、余計なことを言わない安心感がある。


「うん、さっき出してきたよ」


そう答えながら、わたしは教室の後ろの席――一ノ瀬くんの席が空いているのを確認した。

今日は理系クラスの生物実験がある日だったから、一緒の教室にいない。


それだけで、少しだけ気持ちが落ち込む。


教科書を開いても、集中できない。

スマホの通知を気にして、何度も画面を確認してしまう自分が、情けなかった。