素敵だと思った。
わたしには、そんなふうに「これになりたい」って言えるものがないから。
でも──
「わたし、ちゃんと前に進みたい」
塾の帰り道、ひとりきりでつぶやいた。
わたしも、いつか誰かに必要とされる人になりたい。
金曜日の夕方。
塾の数学の授業が終わって、帰り支度をしていたときだった。
「おつかれー。佐倉さん、ちょっといい?」
白石くんが後ろから声をかけてきた。
「うん?」
「前も言ったけど、やっぱり英語得意だよね。今度、問題集見せてくんない?」
「えっ……いいけど、あんまり特別なこと書いてないよ?」
「その“普通”が俺にはありがたいんだよ」
白石くんは笑いながら言って、軽く手を振って帰っていった。
その夜、わたしはまたLINEを開いた。
【今日ね、塾の帰りに白石くんに声かけられた。問題集、見せてって言われたよ】



