君の隣が、いちばん遠い



「うわ、本当に一ノ瀬じゃん。……佐倉さんもいるじゃん。なに、この不思議な集まり」

「不思議な集まりって……まあ、言われてみればそうだけど、さ。一応、私たち同じ中学だったじゃん」

「え!?佐倉さんも同じ中学だったっけ!?」

「そうよ。私の大事な友達なんだからね。失礼なこと言わないでくれる?」


白石くんはわたしのことをようやく思い出した様子だった。

まあ、特に深い交流はなかったから、わたしのことを知らなくても無理はないか。


「ごめんごめん、佐倉さん。それにしても、一ノ瀬、お前、モテるのに誰とも付き合わなかったじゃん。佐倉さんみたいな大人しい子がタイプだったんだな」


白石くんは慌てて話題を変える。

からかうように言われた一ノ瀬くんは、軽く笑って答えた。


「……まあね。でも、佐倉さんほんとにいい子だから。早く言っとかないと取られると思って」


その言葉に、胸がぎゅっとなった。

うれしくて、照れくさくて、なぜか少しだけ泣きそうだった。


3人の時間に白石くんが加わったことで、会話はより賑やかになった。
けれど、それでもわたしの隣にいるのが一ノ瀬くんであることに、どこか安心感を覚えていた。



春がもうすぐそこまで来ていた。

新しい季節に踏み出す前に、今この瞬間を胸に残しておきたいと思った。


ただ、大切な人たちと一緒にいられること。それだけで、十分だった。