春休みの朝、柔らかい陽射しがレースのカーテン越しに部屋を照らしていた。
スマホの画面には、既読がついたばかりの一ノ瀬くんからの返信が浮かんでいる。
『いいよ、楽しみにしてる』
わたしは小さく息を吐き、スマホを胸に抱きしめた。
中学の頃の友人のゆいちゃんがわたしと一ノ瀬くんに会いたがっている。
何の躊躇もなく頷いてくれる一ノ瀬くんのやさしさが、じんわり心に広がった。
ゆいちゃんは中学時代の親友だった。
大人しくて、あまり人と関わるのが得意じゃなかったわたしに、明るく声をかけてくれた数少ない存在。
高校は別々になったけれど、たまにLINEをくれるやさしい子だ。
今日はゆいちゃんと再会する前に、一ノ瀬くんとふたりで会う約束をしていた。
待ち合わせ場所は、あの河原のベンチ。
付き合う前に、並んで座って話をした場所だ。



