「……もう大丈夫なの?」
「まだ、完全にうまくいってるとは言えない。でも、ひよりがいてくれるから、頑張れる」
わたしはその言葉に胸が熱くなって、うつむいた。
「わたしも、一ノ瀬くんがそばにいてくれるから、頑張れるよ」
そのままふたりで家の近くまで歩いて、玄関の前で立ち止まった。
「じゃあ、また連絡するね」
「うん。ありがとう、来てくれて」
彼が手を振って帰ろうとしたとき、わたしのスマホが震えた。
画面には「森下ゆい」の名前。
中学のときの友達だった。
最近はあまり連絡を取っていなかったのに。
『ひよりー! 春休み、ひさびさに会わない?』
懐かしい名前に、ふっと笑みがこぼれる。
わたしの春が、少しずつ動き出しているのを感じた。
恋と友情と、そして少しの勇気とともに。



