シフトを誰にも言ってなかったのに。どうしてここに?

すぐに着替えを終えて外に出ると、一ノ瀬くんはわたしに気づいて、少し照れたように笑った。


「おつかれ。バイト、頑張ってたね」

「どうして……?」

「今日、渡したいものがあって。……ホワイトデーだし」


彼が差し出した紙袋の中には、小さな箱とメッセージカードが入っていた。


「ありがとう……うれしい」

「歩きながら話そうか。家まで送るよ」


ふたりで並んで歩きながら、わたしは紙袋を抱えて胸がいっぱいになっていた。


「……もしかして、ずっと待ってたの?」

「うん。早めに来たら、佐倉さんが店の奥でレジしてるのが見えてさ。なんか、働いてる姿初めて見たから、ちょっと感動した」

「そ、そんなに変じゃなかった……?」

「ううん。かっこよかったよ」


気づけば、空はうっすらと赤く染まりはじめていた。


「ねえ……前にさ。連絡があまり取れなかったときがあったよね」

「うん。そうだったね」

「進路のこととか、勉強のことで……親とぶつかってたって話はしたろ?」