だけど、そんな穏やかな日々が続く中で、わたしの胸に小さな不安が生まれる出来事があった。

数日間、一ノ瀬くんからの返信が極端に減ったのだ。


わたしは夜になるたび、スマホを何度も見て、何も来ていない通知にため息をついた。


「最近、スマホばっかり見てるね」


ある夜、美帆ちゃんが言った。


「……べ、別に」

「ふーん、彼氏?」


図星だった。

でも、言い返す言葉が見つからない。



その夜、ようやく届いたメッセージには、短く「明日、ちゃんと話したい」と書かれていた。



次の日の放課後。昇降口のそばで、一ノ瀬くんが待っていた。


「……ごめん。最近、連絡返せなくて」

「ううん。忙しかったんだよね」

「……家でちょっと、いろいろあってさ。両親と、進路のことで。俺、理系に進みたいって言ったんだけど……親父はずっと、文系で家業を継げって言ってて」


一ノ瀬くんは、わたしに背を向けるようにして話した。