二月に入り、街のあちこちが赤やピンクで染まりはじめた。

駅前の広場には、淡いイルミネーションが灯りはじめ、道ゆく人のコートの袖には白い息がまとわりついていた。

チョコレート売り場には女の子たちが集まり、可愛らしいラッピング用品が所狭しと並んでいる。


わたしは、放課後に文具店のバイト帰りにその様子を横目で見ながら、心の中でため息をついていた。


……今年は、あげられるんだ。好きな人に。


去年までは、バレンタインといえば他人事だった。

でも、今年は違う。

クリスマスに恋人同士になった、一ノ瀬くんという存在がいる。


不思議な気持ちだった。

うれしい、緊張する、でもちょっと怖い。

そんな想いが全部入り混じって、胸の奥で静かにあたたまっていた。






週末、わたしは紗英のちゃん家に誘われた。


「一緒に作ろうよ、バレンタイン」

「……作るって、チョコ?」

「そ。手作りのやつ。あげる人、いるんでしょ?」


紗英ちゃんの明るい声に、わたしは頷くしかなかった。


「よし決定! 明日、うち来て。材料と道具は全部揃ってるから!」