君の隣が、いちばん遠い



教室に入ると、すでに朝のホームルーム直前。


「ギリギリ、間に合ったー!」


勢いよく教室に飛び込んできたのは紗英ちゃんだった。


「ひより〜! おっはよー。って、うわ、顔赤い。さては……」

「ち、違うってば……」


冬休みにさえには遥とのことを伝えていた。

そのせいか、紗英ちゃんはやたらと嬉しそうにわたしをからかってくる。


「ひより……ねぇ、昼休み、ちょっと詳しい話、聞かせてよ?」


わたしは思わずまた頬を染め、「う、うん……」と小さく頷いた。


朝のホームルームが始まっても、クラスの空気は少し浮ついていた。

冬休み明けで、みんなまだエンジンがかかっていない様子。


それでも、ふとした瞬間に一ノ瀬くんと視線が合った。

彼はいつも通り穏やかに微笑んで、わたしも自然と目を伏せながら、頬をほのかに染める。