君の隣が、いちばん遠い



3学期の初日。

冬の空気は澄んでいて、朝の通学路には白い吐息が漂っていた。


家のリビングで制服の裾を整えていると、スマホに届いたメッセージが画面に浮かんだ。


《今日も会えるの、楽しみにしてる》


一ノ瀬くんから届いていた、シンプルだけど温かいメッセージだった。


その画面を見ながら、思わず微笑んだ。

頬がじんわりと熱くなる。


「……彼氏と、いいことあった?」


背後から軽やかな声が響いた。

振り返ると、美帆ちゃんが髪をまとめながらキッチンから顔を覗かせていた。


「ち、ちがうから……!」


でも、その顔は真っ赤になっていて、言い訳が効いていないことは自分でもわかっていた。


「ふーん。ま、今日の髪形、ちょっと気合い入ってる気がするけど?」


そうからかいながら、美帆ちゃんはにっこりと笑った。

美帆ちゃんはにやりと笑って、「ま、よかったじゃん」と言い残し、朝食の片付けに戻っていった。


家を出ると、冬の空気が肌を刺した。

けれどその冷たさすら、今日は少しだけ心地よく感じる。