君の隣が、いちばん遠い



ふたりの間に、少しの沈黙が流れる。

でも、それは気まずさではなく、確かに“つながった”という余韻だった。


一ノ瀬くんが、ゆっくりと手を差し出す。


「手……つないでもいい?」


小さく頷いて、自分の右手の手袋を外した。

一ノ瀬くんも、左手の手袋を外す。


ふたりの生の手が、そっと重なった。


あたたかかった。

それは、マフラーでも、手袋でも代えられない、ただひとつの温度だった。


そのまま、わたしたちは歩き出す。

手をつないだまま、静かな冬の夜の中へ。


クリスマスの夜に灯る、イルミネーションよりも温かい気持ちを、今、胸の中に抱いていた。