君の隣が、いちばん遠い



「……今日、来てくれてありがとう」


その声は、ふだんの明るさとは違って、どこか真剣だった。


わたしは頷いた。


「わたしも……今日、すごく楽しかった」


一ノ瀬くんは、少しだけ目を伏せて、深く息を吸った。

その吐息が白く空に溶けていく。


「……俺、ずっと、ちゃんと伝えたかったんだ」


その言葉に、わたしの心臓が跳ねる。


「佐倉さんのことが、好きです」


鼓動が、身体の内側から響く。

耳の奥まで赤くなるような気がした。


わたしは一歩、踏み出すように視線を遥に向ける。

一ノ瀬くんの瞳はまっすぐで、どこまでも誠実だった。


「……わたしも、ずっと……好き、でした」


ようやく絞り出した声に、一ノ瀬くんが柔らかく笑った。