紗英ちゃんが不思議そうに首を傾げる。
わたしの胸の奥に、ドクリと強く鼓動が響く。
……わたしとの約束があったから、断ったのかな。
誰にも聞かれていないのに、内緒の気持ちが一気に明かされそうで、黙ってスプーンを口に運んだ。
クリスマス当日。
空は抜けるような青だったけれど、風は冷たかった。
わたしは、美帆ちゃんと一緒にクローゼットの前に立っていた。
「せっかくなんだから、ちょっと可愛くして行きなよ。相手、あの“例の彼”でしょ?」
美帆ちゃんが茶化すように笑いながら、何枚かの服を並べる。
「うん……ありがとう」
鏡の前で選んだのは、白いニットに、濃紺のチェック柄のスカート。
そして、先週、悩みに悩んで買った、自分用のマフラー。
首元に巻いてみると、少しだけ勇気が湧いてきた。
「じゃ、行ってくるね」
「いってらっしゃーい。帰ってきたらレポートよろしく!」
玄関で手を振る美帆の声に背中を押され、駅前の広場へと向かった。



