並んで歩き始める。


「バスケ部、大丈夫だった?」

「……うん。びっくりしたけど、みんな元気で。紗英ちゃん、すごく楽しそうだった」

「そっか。佐倉さんは……?」


一ノ瀬くんの問いに、少しだけ間をあけて、ぽつりと答えた。


「……悪くなかった。誰かのために動くのって、なんか、新鮮だった」

「そうか。……うん、佐倉さんらしいな」


そんな言葉をかけられて、また少しだけ、胸が温かくなった。



そして、駅のロータリーが見え始めたころ。

一ノ瀬くんの足が、ふと止まる。


「……あのさ」

「うん?」


わたしが振り返ると、彼は少しだけ俯いて、深呼吸をひとつした。

その仕草に、なんだか胸が騒いだ。


「……クリスマス。空いてる?」

「……え?」


わたしの目が、ぱちぱちと瞬きをする。


「イブでも、当日でもいい。どっちかで、会えたら、うれしい」


いつものように笑っていない、真剣な目だった。

鼓動が早くなる。


「……うん。空いてると思う」

「そっか。……じゃあ、また日が近くなったら、予定決めよう」


そう言って、ようやく一ノ瀬くんが少しだけ笑った。



白い息がふたりの間に浮かんで、すぐに溶けていく。

その余韻が、わたしの胸を優しく締めつけていた。