「ひよりー、こっちはモップお願いねー!」
紗英ちゃんは、すっかり場に馴染んでいた。
大きな声で返事をし、バスケ部の部員たちとも軽口を交わしている。
すごいな、紗英ちゃんは……
そんな彼女の様子を見ながら、わたしもまた、自分の役割を少しずつ掴んでいった。
ボトルを並べたり、タイマーをセットしたり、雑用ではあるけれど、確かに自分が“必要とされている”感覚があった。
昼食時、体育館の隅に敷かれたシートの上で、お弁当屋さんから届いたお弁当を囲みながら皆が笑い声を上げていた。
「なあ、この唐揚げ、マジうまくない?」
「やっぱ合宿って、飯が楽しみなんだよな〜」
部員たちの騒がしい声に、最初戸惑っていたが、紗英ちゃんの隣に腰を下ろし、自然と微笑んでいた。
「ひより、ちょっと慣れてきたでしょ?」
「……うん。最初はびっくりしたけど」
「でしょでしょ? 私もさ、思ったよりみんな明るくていい人ばっかりで安心した〜」



