君の隣が、いちばん遠い



「佐倉、入って。寒くなってきたね」

「……はい」

「じゃあ、まずは選択のことから。文系を希望って書いてくれてたけど、気持ちは固まってる?」

「はい。理数科目よりも、国語や英語の方が得意なので……」

「うん、英語の小テスト、毎回満点だもんね。地道に力を伸ばしてるの、すごく感じるよ」


その言葉に、少しだけ背筋が伸びた。

「ただ……」と先生は少しトーンを落とす。


「将来の夢や目標は、まだはっきりしてない?」

「……はい。進学はしたいですけど、何をやりたいかまでは……」


先生は頷いて、温かい笑みを向けた。


「焦らなくていいよ。今は“何になりたいか”より、“どんな風に生きたいか”の方が大事だから」

「どんな風に……ですか?」

「うん。人と話すのが好きとか、一人で集中するのが得意とか。何が心地よくて、何に違和感があるか。佐倉は、ちゃんと人を見て、空気を読める子だから、自分に合った道をちゃんと見つけられると思う」


わたしの胸に、その言葉がじんとしみた。