「ひよりは?」
紗英ちゃんに問われ、わたしはゆっくり箸を置いた。
「……文系。国語と英語が好きだから。でも、まだ将来のことは……よくわからない」
正直な気持ちだった。
ずっと先のことを考えなきゃいけないのに、足元すら不安定な気がしてならない。
「俺は理系。将来の目標が一応あるから」
一ノ瀬くんの声は淡々としていた。
でも、目はどこか曇っていた。
紗英ちゃんが「なんかカッコいい!え、なになに?」と乗り出した。
でも、一ノ瀬くんは「内緒」と軽く笑った。
ただ、その笑顔の奥に、ほんの一瞬、影が見えた気がした。
……親のこと、なのかな。
放課後。
わたしのクラスでは、数日にわたって一人ずつ久遠先生との二者面談が行われていた。
わたしは初日のトップバッター。
放課後、久遠先生との二者面談に呼ばれ、職員室隣の面談室に入った。
ラフなカーディガンにシャツを合わせた久遠先生は、にこやかにわたしを迎える。



