「進路希望調査票、来週の月曜が締め切りです。忘れずに提出するように」
久遠先生の声が教室に響くと、どっと静かなざわめきが広がった。
その空気はどこか重たくて、落ち着かない。
「うわー、来たか」
「文理選択、マジで決めないとやばいよね」
クラスのあちこちで、ざわざわとした会話が始まる。
わたしはその空気に包まれながら、窓の外を見つめていた。
グラウンドの芝はうっすらと霜をまとい、冬の気配をはらんでいる。
まだ寒さには慣れないけれど、季節は確実に進んでいた。
昼休み。
4人で囲む机に、あたたかな湯気の立つスープとお弁当が並ぶ。
「進路、みんな決めた?」
最初に声を上げたのは、柊くんだった。
箸を動かしながら、どこか気だるそうにしている。
「文系かなって思ってるけど……なんか踏ん切りつかない」
紗英ちゃんが答えると、柊も「だよなー」とうなずいた。



