「もしかして……岸本って、これ好きだったよね? 少女漫画」


一ノ瀬くんが言ってくれたことで、記憶も鮮やかに蘇る。

中に入ると、ポスターやグッズが並ぶコーナーが目に入り、ふたりでその前に並ぶ。


「これ、好きって言ってた……たぶん、これにする」


そう言って選んだのは、彼女の推しキャラのミニクッションとアクリルスタンド。


「絶対喜ぶと思うよ」

「うん、そうだといいな」


買い物を終え、駅へと続く通りを歩いていると、ふと足を止めた。

ショーウィンドウに並ぶ、カラフルなマフラー。


「どうした?」

「……ちょっと、見てただけ」


去年の冬は、必要最小限のものしか持っていなかった。

マフラーもなかった。

けれど、あの日、一ノ瀬くんが貸してくれた温もりだけは、ずっと心に残っている。


「……買おうかな。でも、今日そんなに寒くないし……」


迷うわたしに、彼がふっと微笑む。