「……うん」
わずかにうなずき、少しだけスペースを空けた。
彼女はありがとう、と軽く笑って腰を下ろす。
「最近、席近いのにあんまり話せてないなって思って」
その言葉に、わたしは少し驚いて、箸を止めた。
「……そう、かも」
それだけしか返せなかったのに、彼女は責めるような顔はしなかった。
むしろ、どこか楽しそうにうなずいた。
「うん。でもね、わたし、佐倉さんのそういう静かなとこ、ちょっと好きかも」
「……え?」
「なんか、落ち着くっていうか。ちょっとだけ隣にいたくなる感じ?」
わたしはうまく返せず、ただ「そうなんだ」と小さくつぶやいた。
でも、心の中に少しだけ、あたたかいものが残った気がした。
話すのが苦手な自分に、無理に踏み込んでこない優しさ。
ただ、それをうれしいと思った。
ほんの少し、昼休みの音がやわらかく感じられた。



