君の隣が、いちばん遠い



11月も下旬に差しかかり、空気は本格的に冬の匂いを帯びてきた。

校舎の廊下は暖房が効いているはずなのに、どこかスースーと冷え込みを感じる。

わたしは教室の窓際で、手のひらをこすり合わせていた。


「佐倉ちゃん、寒そうだなー。俺も寒いけど」


柊くんがひょっこり現れ、両手を頬にあててぶるぶると震えてみせた。


「……ほんとに寒いね」


静かに笑うと、紗英ちゃんが後ろからひょいと顔を出す。


「それより柊、用事があるんじゃなかったの?」

「お、そうだったそうだった。俺さ、今日はふたりに“お願い”があるんだ」


柊くんはやたらと真剣な表情をつくって、わたしと紗英ちゃんの前に立った。


「お願い? ってなに?」


首を傾げると、紗英ちゃんが「なに!?告白!? ついに!?」と茶化して声を上げた。


「ちげーよ!」


即座に突っ込む柊くんに、紗英ちゃんは笑いながら「ノリで言ってみただけ~」と肩をすくめる。