君の隣が、いちばん遠い



一ノ瀬くんからのメッセージが届いていた。


《ごめん、きちんとお姉さんに挨拶できなかった。けど、佐倉さんの家族に会えて、ちょっと嬉しかった》


その文字を見て、頬がふわっと赤くなった。

スマホの画面が、まるであのときの玄関前の夕焼けのように、あたたかく揺れて見えた。


胸の中にぽつんと広がる想いを、わたしはゆっくりと言葉にした。


《……わたしも。ありがと》


送信ボタンを押す指先が、ほんの少しだけ震えていた。


それでも、その震えすら今はきらいじゃなかった。


“ちがう”って言ったけど、完全にそうとも言い切れない。

そんな自分の気持ちを、少しずつ認めはじめていた。