昼休みの教室は、ざわめきで満ちていた。


「なあ、今日の体育さ、また持久走らしいよ」
「マジか〜もう走りたくない〜」


机を囲むようにして、クラスメイトたちが笑い合っている。

その輪の外で、わたしはそっとお弁当のふたを開けた。


コンビニのおにぎりと、小さなおかずが入っているだけ。

家では作ってもらえないし、自分で作る時間もないからだ。


けれど、もう慣れた。

話しかけられることもなく、誰にも気づかれずに食事ができることに、安堵すら感じていた。


でも、ふと周囲の笑い声が耳に残って、胸の奥が少しだけきゅっとなる。

——わたしがそこにいたこと、あるのかな……


そのときだった。


「ねえ、佐倉さん。隣、いい?」


ふわっとした明るい声が聞こえて、わたしが顔を上げると、そこには岸本さんがいた。

ツインのお団子ヘアを揺らしながら、お弁当を手に微笑んでいる。