放課後の空気が、少しだけやわらかく感じるようになったのは、最近のことだった。
わたしは、夏の終わりにバイトのシフトを少し減らしていた。いつもの文具店での仕事は好きだったけれど、少しだけ、学校の外の時間も楽しんでみたくなった。
そのきっかけをくれたのは、紗英ちゃんだった。
その日の放課後、わたしは紗英ちゃんと駅前で待ち合わせをしていた。
「ひより〜! こっちこっち!」
いつものように明るい笑顔で手を振る紗英ちゃんに、わたしは控えめに手を挙げて応える。
「ごめん、待った?」
「全然! 今日も可愛いじゃん、その髪ゴム新しくした?」
「うん……朝、ちょっとだけ頑張ってみた」
「いいじゃん〜! じゃあ今日はカフェと、あと雑貨屋まわろうよ!」
紗英ちゃんと過ごす放課後は、思っていた以上に楽しかった。
カフェでプリンを分け合いながら、くだらない話をする。



