君の隣が、いちばん遠い



「前より、ずっと楽しそうだよ」

「……そっかな」

「うん。なんか、表情がやわらかくなった気がする」


その言葉に、ふわりと笑った。

そう言ってもらえる自分でいられたことが、なによりも嬉しかった。






勉強会が終わったのは、すっかり日が落ちたあとのことだった。


「コンビニ寄ってかない? 甘いもの食べたい〜」

「それ、賛成!」


夜の冷たい風に、マフラーの必要性を感じながら、4人は駅前のコンビニに寄った。

明るい店内に、パンやスイーツの棚が並んでいる。


「俺、チョコとカレーパン!」

「私はプリンとお茶」


わたしは、ホットミルクとあんドーナツを手にした。

レジを済ませ、店先のベンチに腰かける。


「甘いものって、ほんと正義……」

「テスト勉強の合間に糖分取らないとね」


わたしはホットミルクをひとくち飲んで、あんドーナツを小さくかじる。


「……おいしい」


ぽつりとつぶやいた言葉に、一ノ瀬くんが横からふっと笑って返す。


「だろ?」


見上げた夜空は、澄んでいて星が滲んでいた。


この時間が、もう少しだけ続けばいいのに──

そう思えるほどには、わたしは確かに“今”を楽しんでいた。