週末、柊くんのバスケ部が他校との練習試合を行うことになった。

わたし、一ノ瀬くん、紗英ちゃんの3人は誘い合って、観客席に座っていた。


「うわ……柊って、いつもより真面目な顔してる」


紗英ちゃんが笑いながら言い、一ノ瀬くんが「まあ、一応レギュラーだしな」と付け加える。


わたしも自然と笑顔になる。

普段はおちゃらけた柊くんが、真剣な眼差しでボールを追っている姿は、ちょっとだけ新鮮だった。


後半、点差が詰まり、会場の空気が緊張に包まれる。


「柊くん、がんばって……」


わたしが思わずつぶやくと、一ノ瀬くんがそっと目を細めた。


「言うようになったな、佐倉さん」

「……そう、かな」

「うん。前は応援する声なんて聞いたことなかった」


その言葉に、わたしは少し照れたようにうつむいた。

試合は僅差で勝利に終わり、柊くんが満面の笑みで観客席に手を振る。


「やったー! 応援ありがとー!」

「ナイスゲーム!」と紗英ちゃんが叫ぶと、観客席の何人かがつられて拍手を送った。