文化祭が終わった翌朝、教室はどこか静かだった。

喧騒と興奮の余韻が残る教室の空気は、次第に“日常”へと戻りつつあった。


わたしは黒板の前で、装飾の残りを外していた。

派手だった色紙も、昨日まではきらきらして見えていたのに、今日は少しだけ色褪せて見える。


「……ありがとう」


背後から聞こえた声に振り向くと、吉岡くんが落ちたポスターを拾っていた。


「佐倉さん、昨日はいろいろありがとう。助かった」

「……こちらこそ」


会話は短く、自然に交わされる。

でも、どこか少し距離が戻ったような、そんな感覚があった。

少しずつ、吉岡くんとの関わりも“いつも通り”に戻っていく。





昼休み、わたしが窓辺で本を読んでいると、羽柴さんが隣に腰を下ろした。


「ねえ、佐倉さん」


その声に顔を上げると、羽柴さんはまっすぐにわたしを見ていた。