「はいはい、嫉妬しない嫉妬しない。ていうか、あんたは誰とでも仲良すぎ」
「だって俺、みんなと仲良くしたい派だもん」
「調子いいなぁ。でも、そういうとこ……ちょっと、助かってるよ」
ふと真面目な声で言う紗英ちゃんに、柊くんは少し驚いたように笑った。
「お、なんだよそれ。惚れた?」
「バカ」
ふたりの笑い声が、空に抜けていった。
その頃、一ノ瀬くんは教室の端から、わたしと吉岡くんの様子を見ていた。
並んでテーブルを拭き、時おり言葉を交わす。
特別な雰囲気ではない。だけど、その自然さが胸に引っかかった。
……なんだろう、この感じ。
やっぱり一ノ瀬くんとは距離ができているような気がした。
そして夕方。
文化祭も終わりに近づき、少しずつ後片付けが始まろうとしていた。
そのときだった。
「佐倉さん、ちょっと話せる?」
教室のドアの前で、一ノ瀬くんがわたしを呼び止めた。



