「─単刀直入に言う。依月をこちら側に戻せ」
「ふむ……それはまた、唐突ですね。皇からの伝言で、記憶が完璧に戻られたのですか?」
「ああ」
「そうですか。─申し訳ありませんが」
男達は頭を下げる。
「いくら父上からのお言葉といえ、お答えすることはできません」
「それは、俺が【中途半端】だからか?」
「そうではなく。貴方が生み出したこの世界は今、いささか複雑な状態なのです。混線している、と、申し上げましょうか」
「混線?」
「私達には権限がございませんので、あちらの世界とこちらの現実を繋ぐ方法はわかりません。しかし、説明することは出来ます。時間が関わっているので、物事の前後が歪んでいたり、最近、この世界は不安定で……とりあえず、中へどうぞ。ここは、守人が提供してくれた私たちの隠家なので、安心してお話できます。それより、よく見つけましたね。こんな人の目に触れない場所」
社の扉を開けながら、微笑む彼に。
「いくら何千年経とうと、分身、いや、我が子の気配は忘れないよ」
ユエは優しく微笑んだ。
さすが、創世神。それにしても、神様全員がユエを起因すると考えると、頭がおかしくなりそうである。
「相変わらず、変なことをおっしゃる」
「そうか?でも、元気そうで良かったよ。光、闇」
「今はルナとステラです」
「そうか。良い名前を貰ったんだな」
「はい」
ユエと会えたからか、どこか嬉しそうなルナとステラは契が空いた位置に座ると、
「─どこからお話しましょうか」
と、目を伏せる。


