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メールだ。確認すると、彩蝶からだった。

『今日のパーティーの付き添い、お願い〜』

簡潔な内容に、安心するようなしないような変な感じ。

それくらい、先程の彼の過去が、行方不明だった間の話が信じられない。

契は口元を覆い、目を閉じる。

『僕は四季の家の、生贄として生まれた。けど、欠陥品で閉じ込められていた時、秋子さんが救い出してくれてね。彼女は僕の全てだったんだ。だから、彼女の願いを、僕は叶えた。最愛の人との間に授かった子ども達を、この身を犠牲にしても守ろうと思って、身を捧げたんだ。─凛の、代償としてね』

─……あれは、管理人が、皇が何とかしたものだと思い込んで流していた。

でも、今思えば、皇はそんなことを知らなかった。
依月を連れ去ったことだって、その話を椿家にしに来たことだって、それは全部、調律者の仕業で、調律者の居場所を知っているのは─……。

「─契?」

道の真ん中で立ち止まっていると、後ろから声をかけられた。
振り返ると、ちゃんと今時の格好をしたユエとティエが心配そうにこちらを見ている。

「契、お前顔色悪い」

人の顔を見るなり、無遠慮にそう言い放ったユエに、

「……責任、とってくれ。ユエ」

「は?」

弱々しく、口から零れたのはそれだけ。

「ユエ、またなにかしたの?」

「いや、冤罪すぎるよ。ティエ」

なにかしたことを前提で話すティエに複雑そうな顔をしたユエはため息をついて後頭部を掻くと、

「ほら、こっち来い」

と、契の手を引いてくれる。

ユエが引く手と反対側をティエが握ってくれて、向かった先は、近くの人目につかない寂れた神社だった。

「……うん、ここなら」

ユエはそう呟いて、鳥居をくぐる。

「ティエ」

「うん、ユエ」

そして、ふたりは小さく頷きあって。
暫くすると、

「─急に呼び出してなんですか」

呆れ顔で現れた、正反対の見た目をしたふたり。

「久しぶり」

「ええ、お久しぶりです。父上」

「……」

見目が麗しい2人。
ひとりは光の下に、ひとりは影の下に。
それぞれ身を落ち着かせ、ユエに会釈する。