「……あ、うん。そうそう。依月の、、え、じゃあ、彼はかなり前から依月を?」
千陽の電話の相手が誰なのかはわからないが、本当に物知りだ。それこそ、四季の家や頂点の四ノ宮家すらも超えて。
「わかった、ありがとう」
─15分くらいの電話を終えた千陽は、頭が疲れたのか、眉間を揉み始める。
「…………ごめん、ちょっと整理させてね」
「いや、そんなことより、さっきの電話の相手誰だよ」
千陽は千景からの質問に、きょとん顔。
「誰って、飛鳥(アスカ)」
「なんで、飛鳥がそこまで詳しいんだ」
「え、なんか、奥さんがそこら辺詳しいらしい」
「余計に意味わからん。飛鳥は四季の家や四ノ宮家から派生した、ヤクザだからいいとして─……」
(……ああ、思い出した。飛鳥って、御影(ミカゲ)家の。四季の家や四ノ宮家もだいぶ法ギリギリなことをしていた時代、家の中で所謂お荷物とされた存在を集めて作り上げられた、今や国の裏社会八割を支配するとされる大組織の会長の孫)
契の頭の中で、関係が思い出されていく。
「ねぇ、契、飛鳥ってだれ?」
ティエをはじめとした神様達が、傍に寄ってくる。
「飛鳥は、御影家の後継者です。昔、四季の家の中で行き場のなかったもの達が集まり、組織されたもので……まぁ、所謂ヤクザですね。天羽組という組織のトップの家が、御影家です。確か、飛鳥はそこの会長の孫で……飛鳥の亡き母親が、千景達の叔母に当たる人なんです。だから、飛鳥と千景達は従兄弟同士ですね」
「孫なのに、後継者になるんだ?飛鳥の父親は」
「確か、抗争で亡くなったとか……でも、それもかなり昔のことだったはずです。俺も自然と伝え聞いただけですし、問題は、数年前に結婚した飛鳥の妻がどうして、四季の家に関する神々の話に詳しいかなんですけど……」
「【冬の宮】が、依月だって」
チラッ、と、契が視線を向けたのと、ほぼ同時。
千陽がそう、千景に言う姿。
耳に入る音に、契が感じるのは、妙な脱力感。
千景の横で聞いてた凛は、あ、という顔をしていたけど、契は依月が【冬の宮】であってくれたことに、凛の代償で連れ去られたわけじゃないことに、心から安堵していた。
「…………良かった」
ただの【冬の宮】ならば、連れ戻せば良いだけ。
お互いが安定剤で、これまでどうにかなっていたんだ。連れ戻して、それに調律者が何か言うなら、真正面からやり合うだけ。


