「えっ、どゆこと?」
ついていけてない千陽が千景に尋ねると、
「話の流れからして、調律者は管理者を─皇を利用したんだろうな」
と、千景が説明した。
「鉢合わせないように、時間稼ぎのために、いろはが帰ってくるタイミングと、彩蝶が逃げるタイミング、そして、俺達が椿家を訪れるタイミングを、調律者は合わせたってこと……」
「そんなことが可能なのか?」
「可能だから、出来てるんだよ。─凛、出来るよな。時巡り最中でも」
「それこそ、理論上はね。でも、凄く難しいよ。時巡りってそれこそ、精神体の負荷が本当に大きいんだ。調律者は所謂神様だから、出来る領域かもしれないけど……」
シン、と、場が静まる。
そこに大きなため息をつく、彩蝶。
「頭で考えるの、私苦手なんだよね。とりあえず、調律者を引きずり出してぶん殴ればいいでしょ」
「いやいや!はやまんな!バカ」
肩を回し始める彩蝶を止める夜霧は、
「馬鹿って何。夜霧も神様なら、調律者が考えてること、少しは思いつかないの?」
「ばっ、お前、調律者って人間だぞ」
「……は?」
いつものような軽口で、とんでもないことを言った。
「調律者が人間?いつの時代のよ」
「そこまでは分からねぇけど……朝霧は」
「僕も分からない。だって、僕達は結局は半端者に過ぎなくて、光と闇がいれば、話は違うかもだけど……」
「え、まだ関係者いるの?もういいよ、面倒くさい」
「いや、神相手にそう言い切る女も中々に珍しいけどな。というか、光と闇はこの世界にも存在している、大切な概念だろうが」
「そうだとしても」
「それに、光と闇はとうの昔に、精神体に戻って、この世界からは消えてる。見守ってはくれてるだろうけど、会話は出来ねーよ」
「それはそれで厄介な……じゃあ、調律者が人間って、夜霧はどうして思うの」
「どうしてって……だって、調律者なんて存在、俺は知らない。ユエを目覚めさせるとか、そんなことしようとするやつ、大体、神の中にいない」
「どうして」
「後が怖いから」
「え、それ、夜霧がビビりなだけじゃなくて?」
「喧嘩売ってんのか、てめぇ!」
「だってさ〜」
「お前、こんな見てくれだが、ユエは創世神だぞ!昔とは肉体変わっていても、御魂は創世神そのもの!つまり、世界と呼応するんだ。事件化する人間と同じにするな。俺達なんて、ユエの一存で消されて終わりだ。そんな命張る真似するか」
必死な夜霧の言葉に、何となく、ユエを見ると。


