「はぁ〜、本当に可愛い」
「お、お姉ちゃん」
……ここ1年で見慣れたが、彩蝶はかなりのシスコンらしく、いろはを溺愛している。
勿論、育ての雪城にいる妹のことも。
「今ここで話していた話、遠隔で聞いていたんだけど」
「会議に集中しろよ」
「うるさい、夜霧」
胡座を組んで、疲労感も隠さず、彩蝶は続ける。
「契の言う通り、本当に罪悪を感じなくていいから。というか、朝霧や夜霧はともかく、ユエはもっと神様らしくしなよ。自分のおかげで、今、目の前の私達が存在する!くらいの勢いでさ」
「いや、それは……」
「なに?過去を思い出して、自信なくしたの?依月を取り返そうって言ってたのに?」
「……」
「さっき、本能がどうとかで契も悩んでたけどさ、そんなの、一言で解決するでしょうが」
深いため息をつきながら、懐から扇子を取り出した彩蝶は誰もいない、障子側に扇子を広げて、一振。─瞬間、突風。大きな硝子音と共に、外に吹き飛ぶ人の影。
「─最愛がいないと生きていけない。それ以外あるわけ?」
扇子を閉じて、こちらを見てくる彼女は何事も無かったかのように尋ねてくる。
「生きていけないんでしょ。もう一年半も経つのに、契は依月を忘れられない。そして、ユエはアマネ…神話の時はティエがいいか…ティエがいなくなって生きられなくなったから、四季の家に呪いをかけたし、契約なんて面倒なものも生み出したし、時の泉ができるくらいに泣いたんでしょ」
窓の外を見ると、庭の木々が伸び動き、吹き飛ばされた人間共を枝のようなもので縛っている。
ちゃんと危険がないか確認したところで、小さく頷いたユエに遅れて、契も頷く。
すると、彩蝶はニヤッ、と、笑って。


