『あらあら』
彩蝶を連れてきた息子を見て、夫妻は笑った。
『新しいお友達!』
『まぁ、そうなの。良かったね』
『新しいお友達は嬉しいな。歓迎会しないと』
家に招き入れ、夫妻は彼女の目にかかる前髪を手で避けて。
夫妻の心情など知らない悠生は、
『お母さん、僕達、お菓子食べたい!』
と、わがままを言う。
それを聞いて、母親の悠依は笑いながら、
『良いけど、今日はお誕生日だから、夜にケーキがあるわよ?食べれる?』
と、悠生の頭を撫でた。
『う〜ん……じゃあ、ひとつを分けっこする!』
『フフッ、そうね。そうしましょうね』
『あげはちゃんもケーキ食べよ!ケーキ!!』
キラキラとした顔の悠生に照らされて、
『うん……』
小さな声で、返事をする。
『悠生、お友達が新しくできて嬉しいのは分かるけど、彩蝶ちゃんはまだ3歳になったばかりのはずだよ。もうちょっとゆっくり話そうね』
『えぇ!?』
『フフフッ、悠生の方が少しお兄さんねぇ』
『そうだね!』
─温かい家庭。
それは、女の子の家庭には存在しない景色。
だからこそ、女の子は、彩蝶はそれに焦がれた。


