過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜

先ほどの検査室で対応してくれた看護師が、再び戻ってきた。
「お疲れさまでした。診察室へどうぞ」

優しく声をかけられ、雪乃は静かにうなずいてその後に続いた。

椅子に腰掛けると、看護師がそっと問いかける。
「大丈夫でしたか? 付き添えなくてごめんなさいね」

雪乃は、できるだけ明るく、笑顔をつくって答える。
「大丈夫でした。ありがとうございました」

すると、タイミングを見計らったように、神崎がファイルを手に診察室に入ってきた。

その表情には、先ほどまで見せていた柔らかさはなく、すでに医師としての顔に戻っていた。

「検査、お疲れさまでした」
席に着いた神崎は、手元のファイルに目を落としながら静かに話し始める。

「まず、心電図の結果ですが、一部に不整脈の兆候が見られました」

「持続的な異常ではありませんが、疲れやストレスなどの影響で悪化する可能性があります」

神崎は一拍置いてから、次の説明に進む。
「心エコーでは、左心室の収縮機能にやや低下が見られました」

「現時点で心不全とは診断できませんが、いわゆる“境界”の段階にあると考えられます」

雪乃の顔が少しこわばったのを感じたのか、神崎は目を上げて優しく続ける。

「命に直結する状態ではありません。でも、放っておけば生活の質が下がってしまう可能性があります」

「今後は、循環器内科で経過をしっかり見ていきましょう」
「まずは生活習慣の改善と、必要に応じて薬の使用を検討します」
「この段階で気づけたことは、とても大きいです」

雪乃は静かに神崎の話に耳を傾けた。

想像していた通りの結果だった。

でも、それがはっきりと“理由”として示されたことに、わずかながら安堵している自分がいた。

長らく曖昧だった苦しみの正体が、ようやく輪郭を持って目の前に現れた気がした。