過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜

神崎は診察室に戻ると、パソコンの前に座り、心電図と心エコーの画像を並べて表示させた。

心電図の波形は、やや乱れがちだった。

とくにP波からQRS波への伝導が不安定で、軽度の不整脈を示している。

「房室ブロックの境界か……」

小さく呟きながら、エコーの動画へと視線を移す。

左心房が軽度に拡張していて、左室の壁運動もわずかに不均一。

今すぐ処置が必要な致命的な所見ではないが、このまま負荷がかかれば、心不全や重度の不整脈に進行する可能性が否定できなかった。

日常生活への影響――QOL(生活の質)の低下も、これまでのふらつきや動悸の頻度から考えれば、すでに始まっているかもしれない。

「疲労やストレスだけのせいじゃない」

キーボードに指を走らせながら、神崎の表情は硬くなる。

自覚症状が軽くても、放っておけば取り返しがつかない事態になりうる。

いま、どこで介入するかで、彼女の未来が変わる――
その責任の重さを噛みしめながら、カルテに所見を入力していった。