ゼリーが肌に触れた瞬間、ひやりとした感覚が雪乃の背筋を走った。
びくりと体がこわばり、無意識に肩が上がる。
「ごめんね。ちょっと冷たいよ」
神崎の声が、すぐそばからそっと降ってくる。
そのまま、彼は手早くバスタオルをかけ直し、その内側に手を差し入れて検査を進めていった。
視線はモニターに向いたまま。無駄のない、落ち着いた動き。
なのに、それが逆に不安をあおった。
彼の手がどこを触れているのか、どこまで見られているのか。意識すればするほど、羞恥心と緊張がせり上がってくる。
(……冷たい。でも、それだけじゃない)
心臓の音がうるさいくらいに響く。
浅く早い呼吸をどうにか整えようとするけれど、空気が胸まで届かない。吸っても吸っても、足りない気がした。
(お願い……早く終わって……)
こわばった身体をほぐそうと、手足に力を入れては抜いてみる。けれど、かえってぎこちなくなるばかりだった。
そんなとき、神崎がふと顔を上げ、雪乃をちらりと見た。
「大丈夫?」
その声は、ふだんより少しだけやわらかかった。
「……苦しくなったら言って。無理はしないでね」
彼の視線はすぐモニターに戻ったけれど、その一瞬だけで、張りつめていた胸の奥がふっと緩む。
「ゆっくり深呼吸しよう。吸って、吐いて……うん、上手」
落ち着いた声が、まるで波のように寄せては返す。
バスタオルの端が軽くめくられ、手の位置がわずかに変わる。
ゼリーがまた違う場所に触れた瞬間、雪乃の心拍が跳ねた。
(……こんなに動揺してるの、ばれてないかな)
室内の静けさの中、自分の呼吸音だけがやけに大きく響いている気がする。
「……もう少しで終わるよ。がんばってる」
その優しいひと言が、張りつめた心をやわらかく包む。
やがて、神崎の手が静かに離れた。
「はい、よく頑張りました」
柔らかな口調とともに、ほんの少し笑ったような声が聞こえる。
その瞬間、雪乃は小さく息を吐き出した。
全身に張りめぐらせていた緊張が、すっと抜けていくのを感じた。
びくりと体がこわばり、無意識に肩が上がる。
「ごめんね。ちょっと冷たいよ」
神崎の声が、すぐそばからそっと降ってくる。
そのまま、彼は手早くバスタオルをかけ直し、その内側に手を差し入れて検査を進めていった。
視線はモニターに向いたまま。無駄のない、落ち着いた動き。
なのに、それが逆に不安をあおった。
彼の手がどこを触れているのか、どこまで見られているのか。意識すればするほど、羞恥心と緊張がせり上がってくる。
(……冷たい。でも、それだけじゃない)
心臓の音がうるさいくらいに響く。
浅く早い呼吸をどうにか整えようとするけれど、空気が胸まで届かない。吸っても吸っても、足りない気がした。
(お願い……早く終わって……)
こわばった身体をほぐそうと、手足に力を入れては抜いてみる。けれど、かえってぎこちなくなるばかりだった。
そんなとき、神崎がふと顔を上げ、雪乃をちらりと見た。
「大丈夫?」
その声は、ふだんより少しだけやわらかかった。
「……苦しくなったら言って。無理はしないでね」
彼の視線はすぐモニターに戻ったけれど、その一瞬だけで、張りつめていた胸の奥がふっと緩む。
「ゆっくり深呼吸しよう。吸って、吐いて……うん、上手」
落ち着いた声が、まるで波のように寄せては返す。
バスタオルの端が軽くめくられ、手の位置がわずかに変わる。
ゼリーがまた違う場所に触れた瞬間、雪乃の心拍が跳ねた。
(……こんなに動揺してるの、ばれてないかな)
室内の静けさの中、自分の呼吸音だけがやけに大きく響いている気がする。
「……もう少しで終わるよ。がんばってる」
その優しいひと言が、張りつめた心をやわらかく包む。
やがて、神崎の手が静かに離れた。
「はい、よく頑張りました」
柔らかな口調とともに、ほんの少し笑ったような声が聞こえる。
その瞬間、雪乃は小さく息を吐き出した。
全身に張りめぐらせていた緊張が、すっと抜けていくのを感じた。



