過保護な医者に心ごと救われて 〜夜を彷徨った私の鼓動が、あなたで満ちていく〜

神崎は、手袋をはめたまま、ごく自然な口調で説明を始めた。

「じゃあ今から心エコーやりますね。胸にゼリーを塗って、超音波で心臓の動きを見る検査です」

「ちょっと冷たいけど、痛みはないです。終わるまで、だいたい十分くらいかな」

彼の声は淡々としていて、安心感のある低音だった。

なのに、雪乃の意識はその声の意味をうまく捉えられていなかった。

神崎の言葉が、遠くの方で響いているように聞こえる。

神崎の手がゼリーのボトルを取り出す様子や、機械の起動音。

どれもが現実感に欠けていて、ただ鼓動の音だけが耳の奥で強調されていた。

そんな雪乃の様子に気づいたのか、神崎がふっと息を漏らして、苦笑いを浮かべた。

「……聞いてる?」

その言葉に、雪乃はハッと我に返った。

「えっ……なんでしたっけ」

うろたえたように答えると、神崎は少し目を細めながらも、もう一度ゆっくりと繰り返してくれた。

「ゼリーを胸に塗って、超音波で心臓を映す検査。冷たいけど痛くないから、安心して。時間は十分くらい。途中で体勢変えてもらうかもしれないけど、僕が声かけるから、楽にしてて」

今度はちゃんと聞いていなきゃ、と思うのに、視線が神崎の指先や、ちらりと覗く表情に引き寄せられてしまう。

この状況なのに、自分が検査に集中できていないことがわかって、余計に心拍が速くなった気がした。